被爆者と国民の核兵器禁止・廃絶の声に背を向けたG7首脳に抗議する

G7広島サミットが閉幕しました。

日本原水協として事務局長談話を発表しました。

【 談話 】

被爆者と国民の核兵器禁止・廃絶の声に背を向けたG7首脳に抗議する

      2023年5月21日 原水爆禁止日本協議会事務局長 安井正和

 

 5月19日から21日まで、被爆地広島で開催されていた先進国首脳会議が共同声明を発表して閉幕した。サミット期間中、G7首脳による原爆資料館の訪問、被爆者との面会はなされたが、最大の焦点である核兵器の禁止・廃絶に関しては、岸田文雄首相が繰り返した「被爆地から力強いメッセージを発信する」どころか、被爆者や国民が期待した新たな努力は一切なく、逆に核抑止力」論を公然と宣言するサミットとなったことは極めて遺憾である。

 

 G7サミットが5月19日に発表した核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」は、核戦争に勝者はなく、また、核戦争は決して戦われてはならない」とのことし1月のP5声明を再確認しても、核戦争を防ぐ唯一最大の保証である核兵器の完全廃絶には一切触れていない。それどころか、核兵器の廃絶を究極の目標」にして、永遠のかなたに先送りし、核兵器は、防衛目的のために役割を果たす」と居直って、核兵器の使用の姿勢さえ誇示している。G7サミットが核兵器廃絶を究極的課題とし、核抑止力」論を公然と宣言したことは極めて重大である。

 被爆地広島に集いながら、核兵器の非人道性に真摯に向き合わず、昨年のNPT再検討会議の最終文書すら考慮しないG7首脳の態度は厳しく批判されなければならない。

 この点で、G7議長である岸田文雄首相の責任は大きい。結局、米国のバイデン政権(大統領)に忖度して、核兵器の非人道性の告発も核兵器禁止・廃絶も提起せず、G7議長として「広島ビジョン」の推進者となった。被爆地出身の総理大臣としての資格はない。

 

 日本原水協は、今回のサミットにあたって、G7首脳が広島・長崎のように非人道的惨禍を引き起こすことを前提にした「核抑止力」論から脱却し、核兵器禁止・廃絶に努力すること。核抑止力の維持やその体制強化の議論を被爆地広島で行うことは絶対に許されないこと。そのために、サミット参加国も受け入れてきた、核兵器国による「自国の核軍備の完全廃絶」(2000年)、「核兵器のない世界の平和と安全」の達成とそのための「枠組」の確立の努力(2010年)など、NPT再検討会議のすべての合意の履行ために誠実に協議することを求め、議長国である日本政府に申し入れを行った。これは、全国の地方自治体の1割をこえる180人の首長と140人の議会議長が支持を寄せたように被爆国国民の強い要求である。

 しかし、これらの要求はすべて無視された。被爆国の運動として強く抗議するものである。

 

 今回のサミットにおいて、岸田首相が提唱したヒロシマ・アクション・プラン」の無内容さも露呈した。核兵器のない世界を究極目標に向けたコミットメントにとって、ヒロシマ・アクション・プラン」は歓迎すべき貢献」(広島ビジョン)としてG7首脳が評価したように、ヒロシマ・アクション・プラン」は、自国の安全をアメリカの核兵器核の傘」に依存しながら、核兵器のない世界」を追求するというそのギャップに蓋をするごまかしのビジョンにすぎない。

 

 今度の会合で唯一、G20の議長で非同盟の軍縮担当国でもあるインドネシアのジョコ大統領が、広島での会合の使命として核兵器の廃絶をよびかけるよう求めた。21世紀核兵器のない世界」への流れをリードしているのは、もはや核大国がリードする核」=抑止力の流れではない。我々は、唯一の被爆国である日本がその流れに加わり、リードする役割を果たすよう、核兵器全面禁止、廃絶の国民世論をたかめるためにいっそう努力を強めたい。

 以上

大軍拡・大増税反対 -教育・子育て予算こそ抜本的拡充を-

 岸田首相は施政方針演説で防衛力の抜本的強化を述べ、「安全保障の大転換ですが、憲法国際法の範囲内で行うものであり、非核三原則専守防衛の堅持、平和国家としての我が国としての歩みを、いささかも変えるものではない」と憲法違反、国際法違反であることをごまかそうとしています。

 さらに日米首脳会談で、バイデン大統領は外交・安保政策で同盟国との連携を重視し、特に中国を「国際秩序を塗り替える意図と能力を持つ唯一の競争相手」と位置づけ、日本に安保面での協力強化を求めてきました。

 危険な防衛戦略の大転換に、閣議決定の撤回、大軍拡反対、大増税反対の運動が広がっています。1月23日には「平和、いのち、くらし、地域をこわす戦争準備の大軍拡、大増税NO!連絡会」(大軍拡NO!連絡会)が結成され、「大軍拡・大増税NO!連絡会」は「平和、いのち、暮らしを壊す大軍拡、大増税に反対する請願署名」の取り組みを全国に呼びかけました。大軍拡・大増税に反対する世論を大きな流れにしていくことが求められます。

 また、憲法9条を空洞化させ、戦争する国づくりが進められようとしている今の危険な情勢の中で、憲法を守り生かす世論を大きくしていくことも求められます。この、国民のいのちとくらしをおびやかす憲法改悪、大軍拡、大増税に反対するとりくみが行われます。

 

大軍拡・大増税すすめる「安保 3 文書」の閣議決定に抗議し、その撤回を求める -教育・子育て予算こそ抜本的拡充を-

 12月16日、いわゆる「安保3文書」の閣議決定に対して、 全教は抗議と閣議決定の撤回を求める書記長談話『大軍拡・大増税すすめる「安保3文書」の閣議決定に抗議し、その撤回を求める-教育・子育て予算こそ抜本的拡充を-』を発表しました。

 

全日本教職員組合(全教) 書記長 檀原毅也
 本日、岸田内閣は、いわゆる安保 3 文書を閣議決定しました。憲法 9 条のもと、専守防衛を防衛戦略とし、先制攻撃はしない、軍事大国にはならないことを基本方針としてきた日本のあり方を根本的に変え、国民のいのちとくらしを危うくする閣議決定に強く抗議するとともに、その撤回を求めます。


 まず、国のあり方の大転換を閣議決定のみですすめることは立憲主義を蹂躙するもので、断じて認めることはできません。国会を軽んじ、国民の声を聞こうとしない政府・与党に民主主義国家の政権を担う資格はありません。
 「安保 3 文書」は「敵基地攻撃能力」の保有を明記し、いざというときにそれを行使すると相手を「脅す」ことにより戦争を未然に防ぐ、すなわち「抑止力」の強化で安全保障をはかろうとしています。「武力による威嚇」は明らかな憲法 9 条違反です。「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」と名称変更しても、また「専守防衛という考え方は変えない」と強弁しても、他国の領土を先んじて攻撃することにほかなりません。相手国の基地のみならず一般市民にも被害が及ぶ恐れがあります。先制攻撃は国際法違反であるばかりか、他国の攻撃を呼び込むことになります。さらに、安保法制における存立危機事態での行使も想定されており、そうなれば日本がアメリカなどの同盟国の戦争に参加し、日本本土が攻撃されるリスクはさらに高まります。「敵基地攻撃能力」の保有は、安全保障どころか、日本の国民、他国の人々のいのちを危うくするものです。
 「安保 3 文書」にもとづき、岸田首相は、来年度以降の 5 年間の防衛予算の総額を 43 兆円とし、2027年度以降は現在の防衛予算のほぼ 2 倍にあたる対 GDP 比 2%以上を確保するとしています。政府予算の約 10%を防衛費にあてる軍事大国化を公然と進めることになります。そもそも GDP 比 2%以上にする規模ありきの議論が先行し、いまに至って、その財源をめぐり増税国債発行など、国民の負担増を求め、ましてや復興特別所得税の転用まで持ち出すなど、政府・与党の姿勢はあまりにも無責任であり、許しが
たいことです。
 歴史は、抑止力の強化を口実に際限のない軍拡競争が始まることを教えています。防衛予算が最優先となり、現在でも不十分な教育予算や社会保障費などがさらに圧迫されるのは確実です。現に岸田首相が掲げた子育て予算の倍増は先送りされ、物価高騰、貧困と格差の拡大から子どもを守る政策は示されないままです。教育予算の対 GDP 比が OECD 諸国の中で最下位レベルの日本で、国民的要求となっている少人数学級の前進や教育無償化、教職員定数増などの実現は遠のく一方です。さらに、「安保 3 文書」の閣議決定を理由にして、教科書の記述内容の変更を迫る動きや子どもたちを自衛隊に勧誘する動きが強まることも予想されます。
 武器輸出の拡大、防衛産業の育成・強化なども図ろうとする「安保 3 文書」の閣議決定は、憲法 9 条を事実上破壊し、国内外に日本の軍事大国化を宣言するものです。他国にとって、軍事的な脅威となることが北東アジアの緊張を高め、国際情勢を不安定化します。ロシアのウクライナ侵攻、北朝鮮のミサイル発射、台湾をめぐるアメリカと中国の対立などの国際情勢のなか、憲法 9 条を持つ国として、排除や対立を深めるのではなく、対立する相手を含む国際平和秩序を構築するための外交努力こそが求められており、それは日本の安全保障につながります。
 戦後 77 年間、日本は国の行為による戦争で他国の人を傷つけることがありませんでした。世界史における稀有な事実を大切にすべきです。全教は「教え子を再び戦場に送るな」を掲げ、平和を求めるすべての人々と連帯して、「安保 3 文書」の撤回を求め、日本の軍事大国化と憲法破壊を許さないたたかいをすすめ、憲法にもとづき一人ひとりが大切にされる社会・教育の実現を求めて奮闘する決意です。
 以上

2022年人事院勧告について(声明)

 人事院が2022年8月8日におこなった国家公務員の給与に関する勧告と人事管理に関する報告に対して、全教は中央執行委員会声明を発表しました。

 

2022年8月8日
全日本教職員組合 中央執行委員会
1.人事院は本日 、一般職国家公務員の給与等に関する勧告と報告を、内閣総理大臣と両院議長に対しておこないました。


2.職種別民間給与実態調査の結果にもとづき、今年 4 月における官民較差は、民間給与が国家公務員給与を 921 円(0.23%)上回っており俸給表の改定を行うこととしています。一時金については昨年 8月から今年 7 月までの民間の支給割合が 4.41 月であるとして、現在の 4.30 月分を 0.10 月分引き上げることとしています。
  厳しい経済状況のもとでも 3 年ぶりの引き上げ勧告になったのは、全労連・国民春闘共闘に結集する 2022 国民春闘のたたかいで、ここ 10 年で最大の賃金引き上げを勝ちとり、政府にケア労働者の処遇改善を実現させるなど、私たちが賃上げの世論をつくりだしてきた運動の反映です。
 しかし俸給表の改定は、初任給の改善と 30 歳代半ばまでの若年層のみの改善にとどまり、この間の物価上昇による生計費増に対応するにはまったく不十分です。コロナ禍のもと国民・住民や子ども・保護者に寄り添い、奮闘している公務労働者・教職員の労苦に報いるものとはなっておらず、強く抗議するものです。

 

3.一時金の引き上げについて、今年度は 12 月期に、来年度以降は 6 月期と 12 月期に均等に割り充てるとしています。今回も、引き上げ分は勤勉手当に充てられています。これは能力・実績主義を推進する政府方針に追随するものであると同時に、期末手当しか支給されない会計年度任用職員にとっては、引き下げられることはあっても引き上げられることはない極めて不当なものです。さらに引き上げ分0.1 月分の内 0.02 月分を全員から引きはがし、成績上位者の勤勉手当の原資に充てることは断じて許すことはできません。


4.諸物価高騰が国民生活を圧迫しています。今こそ、政府による経済対策として、公務員の政策的な賃金引き上げが求められます。中央最低賃金審議会による今年の最低賃金引き上げ目安額は、過去最高3.3%・31 円の目安額を決定しました。これにより最低賃金の全国加重平均は 961 円となり、地域間格差がさらに拡大しました。経済の好循環をうみだし地域経済を活性化させるためにも、政府の責任で公務員賃金を政策的に引き上げ、深刻な地域間格差、正規と非正規の賃金格差解消を図り、経済の立て直しに踏み出すべきです。あらためて勧告の取り扱いについて、物価上昇に対応できる賃金引き上げを強く求めるものです。


5.「公務員人事管理に関する報告」では、長時間労働解消の課題について管理職のマネジメント能力の向上ばかりが強調され、直接的な人員増にはふれられていません。一方、テレワークをはじめとする柔軟な働き方を一層促進するため、フレックスタイム制および休憩時間制度の柔軟化について、本年度内に措置するとしています。コアタイムを現在の 5 時間から 2 時間にする、1 日の最短勤務時間を 2 時間まで短縮可能にし、最長で 6 時間 30 分の連続勤務を設定できるようにする、休憩時間制度を柔軟化させ最長で 6 時間 30 分の連続勤務を設定できるようにする、5 時から 22 時の間をフレキシブルタイムとして勤務時間を設定できるようにするなどの仕組みが検討されています。8 時間労働の原則を破壊し、長時間労働や連続勤務を制度化することは、長時間過密労働が蔓延する学校現場では、健康・安全への影響、生活リズムの破壊や持ち帰り仕事の増加など、多くの問題をはらんでおり、決して容認できるものではありません。


6.今後、各地方においても人事委員会に対し、実質賃金引き上げにつながる勧告を求めるとりくみをすすめ、確定闘争がスタートします。深刻な教員不足を解消するためには、教員の待遇改善は待ったなしの課題です。再任用職員や会計年度任用職員をふくむ臨時・非常勤教職員の待遇改善、ハラスメントの根絶、妊娠、出産、育児等と仕事の両立支援の前進など、子どもたちの教育に教職員が力を合わせ、生活の不安なしに教育に専念できる教職員の待遇改善を文科省と地方教育委員会にあらためて求めるものです。そして新自由主義的政策から憲法が生きる社会への転換をめざし、教職員定数の抜本的な改善とともに長時間過密労働の解消、能力・実績主義賃金の拡大を許さないたたかいに引き続き全力を挙げる決意です。 

【談話】岸田首相による安倍元首相の「国葬」実施の表明に抗議する

 全教は、7月20日、書記長談話『岸田首相による安倍元首相の「国葬」実施の表明に抗議する』を発表しました。

 

2022 年 7 月 20 日 

全日本教職員組合(全教)
書記長 檀原毅也
 7 月 14 日、岸田首相は記者会見で、7 月 8 日に死去した安倍元首相の「国葬」をこの秋におこなうことを表明しました。その後の報道では 7 月 22 日に閣議決定をするとされています。「国葬令」が 1947年に失効し、現行法には「国葬」の規定はありません。1967 年に吉田茂元首相の「国葬儀」がおこなわれた例があるのみで、「国葬」の実施はきわめて異例なものです。
 多くの国民は、参議院選挙の遊説中に銃撃され不慮の死を遂げた安倍元首相を追悼する思いを持ち、いかなる理由があろうとも暴力によっていのちを奪う行為を許すことができないと考えています。しかし、「国葬」の実施について国民的な合意がないこともまた明らかです。「国葬」は安倍氏の政治を美化し、故人への賛美を国民に強要することにほかならず、民主主義を損なうものです。
 現時点で「国葬」がどのようなかたちでおこなわれるかは不明確ですが、もしも学校を含む官公署における弔旗掲揚等が強制されるとすれば、子どもや教職員に弔意を押しつけることになります。憲法第19 条の思想・信条の自由の保障に抵触し、個人の内心を統制することにほかならず、許されません。
 岸田首相は「国葬」によって「我が国は暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜くという決意を示していく」と述べていますが、そもそも個人の死を政治利用することは厳に慎むべきです。
 岸田首相は、安倍氏が歴代最長の通算 8 年 8 か月の間、首相を務めたことなどを「国葬」実施の理由としました。しかし、2 度にわたる安倍政権のもと、教育基本法は改悪され、教育現場に安倍「教育再生」が押しつけられました。いったん制度化された高校授業料無償化に所得制限が導入され、救貧対策に変質させられました。集団的自衛権行使容認の閣議決定に続き、安保法制=「戦争法」の成立を強行し、新自由主義的な経済政策である「アベノミクス」は、貧困と格差の拡大を深刻化させました。森友・加計学園問題桜を見る会など権力の私物化をすすめ、国会の議論を軽視し、政治の劣化がすすみました。これらの事実に対して、全教は批判し、多くの人々とともに政策転換を求め続けてきました。
 このような声を考慮することなく、岸田首相は、短時日の間に、「国葬」の実施を表明しました。「国葬」の費用は全額国費で賄われるとされており、国民の声を幅広く聞くことは不可欠です。さらに、銃撃事件の容疑者の動機が、旧統一教会への恨みと報じられていることからも、政治家と宗教団体の関係について明らかにすることもきわめて重要です。
 全教は、岸田首相による故安倍氏の「国葬」実施の表明に強く抗議し、その撤回を求めるとともに、多くの人々と力を合わせ、憲法をいかし、民主主義にもとづく政治の実現と、一人ひとりを大切にする教育と社会の実現を求める決意を表明します。

                     以上

教員免許更新制廃止を歓迎するものの、新たな管理強化につながる教特法「改正」に強く抗議する

 全教は、5月18日、「教育公務員特例法および教育職員免許法の一部を改正する法律案」についての書記長談話を発表しました。

2022 年 5 月 18 日
全日本教職員組合 書記長 檀原毅也

 5 月 11 日、「教育公務員特例法および教育職員免許法の一部を改正する法律案」が可決成立しました。これにより、2009 年に導入されてから 14 年間教員を苦しめてきた教員免許更新制が廃止されます。全教は、制度導入によって図らずも教員免許を失う「うっかり失効」や更新時講習の負担など、制度の問題を訴え、強く廃止を求めてとりくんできました。2021 年には「教員免許更新制の廃止を求める『私のひとこと』署名」を行ってわずか2ヶ月足らずで 3 万 7000 筆を集め、文科省に教職員一人ひとりの思いを届けました。その声が国を動かす力となり、制度廃止を実現させました。
 改正教育職員免許法は 7 月 1 日に施行され、その時点で有効な教員免許状は手続することなく「有効期限のない免許状」となり、施行日前に有効期限を超過した教員免許状は「失効」となるものの、都道府県教育委員会に再授与申請手続きを行うことで「有効期限のない免許状」の授与を受けることが可能とされました。文科省は、再授与申請手続きに必要な書類等については各都道府県教育委員会が定めているとして、「申請書」や「学力に関する証明書」、「戸籍抄本・謄本」などを例示しています。改正法の附帯決議では「『教師不足』を解消するためにも、改正前の教育職員免許法の規定により教員免許状を失効している者が免許状授与権者に申し出て再度免許状が授与されることについて、広報等で十分に周知を図るとともに、都道府県教育委員会に対して事務手続の簡素化を図るよう周知すること。また、休眠状態の教員免許状を有する者の取扱いについて、周知・徹底すること」とあり、各教育委員会は事務手続きの簡素化を行うことが求められます。


 同時に改正された教育公務員特例法は、教員の研修受講履歴の記録を義務化するとともに、記録にもとづく校長による「指導・助言」が人事評価の面接の場で行われることなどから、確実に教員の管理・統制強化につながるものと考えられ、容認できない問題をもつものとなっています。国会の参考人質疑でも多くの参考人が「教育公務員特例法の改正は必要ない」とはっきり陳述するほど、無用な「改正」であることは明らかです。教員免許更新制廃止と引き換えに、新たな管理・統制を押し付けようとするやり方は許されません。
 すでに、法改正をめぐって検討していた中央教育審議会「『令和の日本型学校教育』を担う教師の在り方特別部会・初等中等教育分科会教員養成部会合同会議」の「審議のまとめ」(2021 年 11 月)にも同じ問題がありました。教員免許更新制廃止の理由に教員の負担軽減をあげているにもかかわらず、研修強化で新たな負担を教員に被せようとするのはまったく矛盾しています。
 教職員にとって研修は必要ですが、それは本来強制されるものではなく、自主的・自発的に行うものです。しかし、学校現場では教職員が自由に研修を行うことが難しくなる中、国の定めた「研修」が一方的に押し付けられ、物言わぬ教職員づくりがすすめられてきました。研修履歴の記録が義務化されることによって、このような管理・統制が強化されることは明らかです。校長が人事評価の期首・期末面談で記録をもとに研修の奨励を行うとされていますが、新たなパワハラにつながるのではないかと懸念されます。
 改正法の附帯決議には「教員の多忙化をもたらすことがないよう十分留意する」「教員から研修の報告等を求める場合には、報告等を簡潔なものとする」「本法による研修等に関する記録の作成及び資質の向上に関する指導助言等は、この人事評価制度と趣旨・目的が異なることを周知する」など、法改正によって教員のさらなる多忙化を生み出すことや、人事評価と同時に行われる「指導・助言」が教員への圧力となることなどの危険性を排除するよう求めています。附帯決議に記されたことは、すなわち、法改正の問題点ととらえ、教育委員会や管理職は、誤った運用を行わないようすることが求められます。
 附帯決議が「各学校で実施する校内研修・授業研究及び教育公務員特例法第 22 条第 2 項に規定する本属長の承認を受けて勤務場所を離れて行う研修も『任命権者が必要と認めるもの』」と、研修のあり方を改めて強調していることを大いに活用し、各学校で自主的・自発的な研修を旺盛にすすめていく契機とすることが必要です。全教は、文科省に対して改正法の抜本的な見直しを求めるとともに、すべての教職員が積極的に研修を行うことができるような教育条件整備をすすめるよう求めるものです。