2022年人事院勧告について(声明)

 人事院が2022年8月8日におこなった国家公務員の給与に関する勧告と人事管理に関する報告に対して、全教は中央執行委員会声明を発表しました。

 

2022年8月8日
全日本教職員組合 中央執行委員会
1.人事院は本日 、一般職国家公務員の給与等に関する勧告と報告を、内閣総理大臣と両院議長に対しておこないました。


2.職種別民間給与実態調査の結果にもとづき、今年 4 月における官民較差は、民間給与が国家公務員給与を 921 円(0.23%)上回っており俸給表の改定を行うこととしています。一時金については昨年 8月から今年 7 月までの民間の支給割合が 4.41 月であるとして、現在の 4.30 月分を 0.10 月分引き上げることとしています。
  厳しい経済状況のもとでも 3 年ぶりの引き上げ勧告になったのは、全労連・国民春闘共闘に結集する 2022 国民春闘のたたかいで、ここ 10 年で最大の賃金引き上げを勝ちとり、政府にケア労働者の処遇改善を実現させるなど、私たちが賃上げの世論をつくりだしてきた運動の反映です。
 しかし俸給表の改定は、初任給の改善と 30 歳代半ばまでの若年層のみの改善にとどまり、この間の物価上昇による生計費増に対応するにはまったく不十分です。コロナ禍のもと国民・住民や子ども・保護者に寄り添い、奮闘している公務労働者・教職員の労苦に報いるものとはなっておらず、強く抗議するものです。

 

3.一時金の引き上げについて、今年度は 12 月期に、来年度以降は 6 月期と 12 月期に均等に割り充てるとしています。今回も、引き上げ分は勤勉手当に充てられています。これは能力・実績主義を推進する政府方針に追随するものであると同時に、期末手当しか支給されない会計年度任用職員にとっては、引き下げられることはあっても引き上げられることはない極めて不当なものです。さらに引き上げ分0.1 月分の内 0.02 月分を全員から引きはがし、成績上位者の勤勉手当の原資に充てることは断じて許すことはできません。


4.諸物価高騰が国民生活を圧迫しています。今こそ、政府による経済対策として、公務員の政策的な賃金引き上げが求められます。中央最低賃金審議会による今年の最低賃金引き上げ目安額は、過去最高3.3%・31 円の目安額を決定しました。これにより最低賃金の全国加重平均は 961 円となり、地域間格差がさらに拡大しました。経済の好循環をうみだし地域経済を活性化させるためにも、政府の責任で公務員賃金を政策的に引き上げ、深刻な地域間格差、正規と非正規の賃金格差解消を図り、経済の立て直しに踏み出すべきです。あらためて勧告の取り扱いについて、物価上昇に対応できる賃金引き上げを強く求めるものです。


5.「公務員人事管理に関する報告」では、長時間労働解消の課題について管理職のマネジメント能力の向上ばかりが強調され、直接的な人員増にはふれられていません。一方、テレワークをはじめとする柔軟な働き方を一層促進するため、フレックスタイム制および休憩時間制度の柔軟化について、本年度内に措置するとしています。コアタイムを現在の 5 時間から 2 時間にする、1 日の最短勤務時間を 2 時間まで短縮可能にし、最長で 6 時間 30 分の連続勤務を設定できるようにする、休憩時間制度を柔軟化させ最長で 6 時間 30 分の連続勤務を設定できるようにする、5 時から 22 時の間をフレキシブルタイムとして勤務時間を設定できるようにするなどの仕組みが検討されています。8 時間労働の原則を破壊し、長時間労働や連続勤務を制度化することは、長時間過密労働が蔓延する学校現場では、健康・安全への影響、生活リズムの破壊や持ち帰り仕事の増加など、多くの問題をはらんでおり、決して容認できるものではありません。


6.今後、各地方においても人事委員会に対し、実質賃金引き上げにつながる勧告を求めるとりくみをすすめ、確定闘争がスタートします。深刻な教員不足を解消するためには、教員の待遇改善は待ったなしの課題です。再任用職員や会計年度任用職員をふくむ臨時・非常勤教職員の待遇改善、ハラスメントの根絶、妊娠、出産、育児等と仕事の両立支援の前進など、子どもたちの教育に教職員が力を合わせ、生活の不安なしに教育に専念できる教職員の待遇改善を文科省と地方教育委員会にあらためて求めるものです。そして新自由主義的政策から憲法が生きる社会への転換をめざし、教職員定数の抜本的な改善とともに長時間過密労働の解消、能力・実績主義賃金の拡大を許さないたたかいに引き続き全力を挙げる決意です。