大軍拡・大増税すすめる「安保 3 文書」の閣議決定に抗議し、その撤回を求める -教育・子育て予算こそ抜本的拡充を-

 12月16日、いわゆる「安保3文書」の閣議決定に対して、 全教は抗議と閣議決定の撤回を求める書記長談話『大軍拡・大増税すすめる「安保3文書」の閣議決定に抗議し、その撤回を求める-教育・子育て予算こそ抜本的拡充を-』を発表しました。

 

全日本教職員組合(全教) 書記長 檀原毅也
 本日、岸田内閣は、いわゆる安保 3 文書を閣議決定しました。憲法 9 条のもと、専守防衛を防衛戦略とし、先制攻撃はしない、軍事大国にはならないことを基本方針としてきた日本のあり方を根本的に変え、国民のいのちとくらしを危うくする閣議決定に強く抗議するとともに、その撤回を求めます。


 まず、国のあり方の大転換を閣議決定のみですすめることは立憲主義を蹂躙するもので、断じて認めることはできません。国会を軽んじ、国民の声を聞こうとしない政府・与党に民主主義国家の政権を担う資格はありません。
 「安保 3 文書」は「敵基地攻撃能力」の保有を明記し、いざというときにそれを行使すると相手を「脅す」ことにより戦争を未然に防ぐ、すなわち「抑止力」の強化で安全保障をはかろうとしています。「武力による威嚇」は明らかな憲法 9 条違反です。「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」と名称変更しても、また「専守防衛という考え方は変えない」と強弁しても、他国の領土を先んじて攻撃することにほかなりません。相手国の基地のみならず一般市民にも被害が及ぶ恐れがあります。先制攻撃は国際法違反であるばかりか、他国の攻撃を呼び込むことになります。さらに、安保法制における存立危機事態での行使も想定されており、そうなれば日本がアメリカなどの同盟国の戦争に参加し、日本本土が攻撃されるリスクはさらに高まります。「敵基地攻撃能力」の保有は、安全保障どころか、日本の国民、他国の人々のいのちを危うくするものです。
 「安保 3 文書」にもとづき、岸田首相は、来年度以降の 5 年間の防衛予算の総額を 43 兆円とし、2027年度以降は現在の防衛予算のほぼ 2 倍にあたる対 GDP 比 2%以上を確保するとしています。政府予算の約 10%を防衛費にあてる軍事大国化を公然と進めることになります。そもそも GDP 比 2%以上にする規模ありきの議論が先行し、いまに至って、その財源をめぐり増税国債発行など、国民の負担増を求め、ましてや復興特別所得税の転用まで持ち出すなど、政府・与党の姿勢はあまりにも無責任であり、許しが
たいことです。
 歴史は、抑止力の強化を口実に際限のない軍拡競争が始まることを教えています。防衛予算が最優先となり、現在でも不十分な教育予算や社会保障費などがさらに圧迫されるのは確実です。現に岸田首相が掲げた子育て予算の倍増は先送りされ、物価高騰、貧困と格差の拡大から子どもを守る政策は示されないままです。教育予算の対 GDP 比が OECD 諸国の中で最下位レベルの日本で、国民的要求となっている少人数学級の前進や教育無償化、教職員定数増などの実現は遠のく一方です。さらに、「安保 3 文書」の閣議決定を理由にして、教科書の記述内容の変更を迫る動きや子どもたちを自衛隊に勧誘する動きが強まることも予想されます。
 武器輸出の拡大、防衛産業の育成・強化なども図ろうとする「安保 3 文書」の閣議決定は、憲法 9 条を事実上破壊し、国内外に日本の軍事大国化を宣言するものです。他国にとって、軍事的な脅威となることが北東アジアの緊張を高め、国際情勢を不安定化します。ロシアのウクライナ侵攻、北朝鮮のミサイル発射、台湾をめぐるアメリカと中国の対立などの国際情勢のなか、憲法 9 条を持つ国として、排除や対立を深めるのではなく、対立する相手を含む国際平和秩序を構築するための外交努力こそが求められており、それは日本の安全保障につながります。
 戦後 77 年間、日本は国の行為による戦争で他国の人を傷つけることがありませんでした。世界史における稀有な事実を大切にすべきです。全教は「教え子を再び戦場に送るな」を掲げ、平和を求めるすべての人々と連帯して、「安保 3 文書」の撤回を求め、日本の軍事大国化と憲法破壊を許さないたたかいをすすめ、憲法にもとづき一人ひとりが大切にされる社会・教育の実現を求めて奮闘する決意です。
 以上