全教の取り組み「文科省による不当な教育介入に抗議」

 全教は、3月20日 つぎの談話を発表しました。

文部科学省による学校と地方教育委員会への不当な教育介入に断固抗議する!

                        2018年3月20日
              全日本教職員組合(全教)書記長 小畑 雅子

1.文部科学省が、2 月に名古屋市立中学校で文部科学省事務次官前川喜平氏が授業の一環として講演したことについて、名古屋市教育委員会を通じ、学校長に対し、講演内容等の確認や録音データの提出を求め、不当な圧力をかけていたことが明らかとなりました。全教は、文科省による、憲法の精神に反する教育への不当な介入に、断固抗議するものです。

2.文科省が個別の学校の授業内容について調査することは極めて異例です。文科省は 2 回のメールで計26 項目にわたり、講師に招いた目的、謝礼額、参加人数、保護者や生徒の反応などについて「具体的かつ詳細にご教示ください」などと執拗に問い詰めています。さらに、講演の録音データの提供を要求するとともに、「どのような方がどの程度参加されたか」などと参加者の情報まで求めています。
また、名古屋市教委に対しても「前川氏の講演による授業をどのように判断しているか、お考えをご教示ください」などと圧力をかけています。今回の文科省の行為は「調査」などではなく、明らかに、教育への不当な介入であり、学校と地方教育委員会に対する恫喝ともとれるものです。

3.教育基本法には、戦前の国家主義的な教育への反省から「教育は、不当な支配に服することなく」行われるものであることが明記されています。最高裁も「教育内容に対する・・国家的介入はできるだけ抑制的であること」(旭川学テ判決)としています。しかし、林文科大臣は、「法令にのっとった行為。一般的にあること」などと開き直り、正当化しようとしています。授業の内容など教育課程の編成権は各学校にあり、本来文科省は、不当な介入から学校を守るべき立場です。その文科省が各学校の授業の内容に介入し圧力をかけるなど、憲法教育基本法が禁じている国家権力による教育内容への不当な支配そのものであり、許されるものではありません。このような文科省による学校や地方教育委員会への介入がまかり通るなら、子どもたちの実態をふまえた創意ある多様で豊かな教育活動が阻害されることとなり、国による教育統制につながります。

4.また、文科省のメールでは、「出会い系バーの店を利用」「こうした背景がある同氏」などと前川氏への人格攻撃ともいえる内容も含めて、講演依頼に対し「どのような判断で依頼されたのか」などと回答を求めています。安倍政権に批判的な人物の言動をチェックし、圧力をかけるものと言えます。今回の文科省の行為の背景には、自民党の国会議員からの働きかけがあったことが報道されています。意見の異なる者を排除する安倍政権の異常な体質が表れていると言わざるを得ません。

5.全教は、文科省に対し、過ちを認め謝罪し、政治家からの働きかけやその影響なども含め真相を明らかにするとともに、地方教育委員会や学校への教育施策の押しつけや不当な介入を行わないことを強く求めます。

以上