【全国学力・学習状況調査の実施にあたって】

 4月17日 全国一斉学力テスト(全国学力・学習状況調査)が実施されました。

全国一斉学力テストは、2007年、43年ぶりに復活し当初は全員参加の方式でしたが、
 点数競争で教育をゆがめる
 学力向上に役立たず、無駄遣い
と批判が起こり、事業仕分けで、2010年から約3割の学校を抽出して実施する方法になりました。

 流れとしては、縮小の方向で進むのかと思いきや、従来国語と算数・数学だけだったのが、今年度から新たに理科が加わり、教育予算が減額されている中で4億円も増額して実施しました。また、文部科学省は来年度以降、数年に1度の割合で全員参加方式を復活する方針を打ち出しています。


 これに対して 全教 教育文化局長の談話が発表されましたので紹介します。

■談話−2012 年度の全国学力・学習状況調査の実施あたって 2012 年4 月17 日
 「競争と管理」の教育をすすめる全国一斉学力テストの中止を強く求めます           全日本教職員組合(全教)

1.文部科学省は、本日、「全国学力・学習状況調査」(以下「全国一斉学力テスト」)を実施しました。「平成24 年度文部科学関係予算」は、期待された小学校2 年生の35 人学級のための定数改善はされず、義務教育費国庫負担金が70 億円の減額となったにもかかわらず、「全国学力・学習状況調査の実施」には4 億円増の40 億円が計上されました。国語、算数・数学に理科が加えられ、来年度「きめ細かい調査」として悉皆調査の準備を行うとしています。一昨年、抽出調査に変更された全国一斉学力テストは、昨年は東日本大震災と東電福島第1 原発事故により希望調査のみとなり、二年ぶりの抽出調査となりました。今年度の全国一斉学力テストは、4 月12 日現在の文科省発表によると、抽出30.5%、希望50.7%を合わせた81.2%の実施率(小中学校合計)となっています。

2.全教は、これまで、全国一斉学力テストは、子どもたちと教育に対する「競争と管理」を強め、子どもたちと学校をテストの点数によって序列化し、教育の格差づくりをすすめるものであると、厳しく批判してきました。
 今回のテストから理科が追加され、小学校では午前中の4 時間がすべてテストで埋まり、午後にも「児童質問紙」が行われました。中学校では、テストが5 時間目まで続き、その後生徒質問紙への回答となっています。子どもたちの負担は極めて大きくなっています。
 また、東日本大震災と東電福島第1 原発事故により仮設住宅での不自由な生活を余儀なくされた子どもたちが自宅に帰る見込みもたたず、他校の間借りで授業が行われているところもまだまだ数多く残っている中での実施であったことも重大です。
 さらに、一昨年と同じ一部の民間企業・教育産業がデータをすべて管理する問題もそのままです。その中には、3 教科の点数とともに、生活や学習環境のデータなど、プライバシーとしての内容も含まれます。
 全教が行ったアンケート調査においても「これまで宿題はなかった春休みに、小学校5 年生と中学校2 年生だけ宿題がだされた」「昼休みを削ってドリルの時間を増やしたりしている学校がある」「夏休みに補習を強要し過去問などをやっている」など、子どもたちの負担は増やされています。また、「全国一斉学力テスト対策の授業が年度初めに行われ進路が遅れた」「テスト対策用の授業が公然と行われる。テストの練習を事前に何回も行う」「小学校では事前の練習、更に、『漢字ドリル』『計算ドリル』などドリルが一気に入り込んだ」など、子どもたちの実態や願いを無視した教育課程が押しつけられる事態も深刻です。
 2010 年に出された国連子どもの権利委員会第3 回勧告は、日本の教育制度について「高度に競争主義的な性格が、いじめ、精神障害不登校・登校拒否、中退、および自殺の原因になっている」と指摘しました。これは1998 年の第1回最終所見から繰り返し指摘されてきた内容です。
 全国一斉学力テストは、この指摘に応えないばかりか、いっそう競争を激しくし、教育の営みを破壊するものであることが明確になっています。

3.すべての子どもたちに豊かな学力を保障することは、父母、国民の願いであり、学校づくりの大切な柱です。そのためには教育予算をOECD諸国なみに増やし、教職員の増員と、少人数学級の前進など教育条件の改善こそが求められています。全教は教育の営みを破壊する全国一斉学力テストの中止を改めて強く要求し、抜本的な教育予算増と教育条件改善とともに、子どもたちの実態にもとづく一つひとつの学校からの学校づくり、教育課程づくりのとりくみを前進させる決意です。
以  上