【教育再生実行会議が「第七次提言」を安倍首相に提出】

 安倍内閣の私的諮問機関である「教育再生実行会議」が第七次提言を提出しました。
 
 この提言について、全教で談話を発表しました。

【談話】教育再生実行会議「第七次提言」について
                               2015年6月3日
                             全日本教職員組合(全教)
 教育再生実行会議は、5月14日、「これからの時代に求められる資質・能力と、それを培う教育、教師のあり方について(第七次提言)」(以下、「提言」)を安倍首相に提出しました。今後、中教審において、教員採用試験の国と自治体による「共同実施」や「チーム学校」の推進などについて、その具体化がはかられようとしています。
1.「提言」は、「求められる人材像」として情報通信技術の発展やグローバル化の進展などに対応するための資質や能力を「より良い製品やサービスを提供」することや「付加価値を生み出(す)」ための「主体的に課題を発見し、解決に導く力」や「新しい価値を生み出す創造性、起業家精神」などとし、教育をそうした資質を身につけさせることを目的としたものに転換することを求めています。このことは、教育をグローバル大企業の戦略を実現するための「人材」育成の道具にしようとするものであり、すべての子どもたちの成長・発達を保障する権利としての教育を否定するものです。
2.具体的には、教育内容や方法について、「体験型・課題解決型の学習」としてアクティブ・ラーニングの推進、反転授業や協働学習などICTの活用を掲げ、「グローバル人材の育成を志向する大学」には「国際競争力のあるカリキュラムの編成」、「小学校段階から、地域の企業や団体との連携」、「商品開発や店舗経営などの体験学習」を例示するなどにそのねらいがあらわれています。
  そして、こうした教育を担う教員をつくりだすために、教員が標準的に習得することが求められる「能力の明確化」とその「育成指標」を策定すること、「教師の資質向上」のための「教職員体制の整備」、「教師インターン制度(仮称)」の検討、教員採用試験の共同実施やそれらのための拠点整備など、戦後、開放性を原則としてきた教員養成をはじめ、採用、研修など、すべてにわたって国が関与を強め、統制・支配を強化するしくみをつくり上げることを狙っています。
3.全教はこれまでも、教員の「資質能力の向上」は子どもたちの成長・発達を保障する上からも重要であるとする立場に立って、そのためには、ア)教員の成長を保障するもっともたしかな場は学校現場にあること、イ)自主性を保障した研修でこそ教員としての成長が保障されること、ウ)教員としての成長を保障する教員の自主性を尊重した現職研修の制度を充実させることなどを指摘し、求めてきました。また、日本政府も賛成し決定された「教員の地位勧告」が「学問の自由」の尊重や教員政策にあたって「教員の自由、創意及び責任を減殺しないようなものとする」ことを求めています。
  しかし、「提言」の示す方策は、こうしたものと対極のものであり、教育の本来のあり方に反していると同時に、「教師の資質向上」にとっても有害なものです。
4.「提言」は、基礎的な知識・技能の重要性、課題を発見する能力、失敗を恐れず未知の場に飛び出すチャレンジ精神、プラス思考で課題に意欲的にとりくむ姿勢などを求められる資質としてあげ、教師が「全ての子どもの可能性を信じ、その潜在的な能力を引き出す」こと、自己肯定観を醸成していくことの重要性を指摘しています。さらに、アクティブ・ラーニングの導入にあたって「手段が目的化」すれば逆効果だとして「現場の創意に富んだ多様な教育活動を行えるよう自由度を与えることも重要」とし、学習指導要領の改訂にあたっては「指導方法を画一的、限定的に定めることとならないよう」示し方を工夫する、高校の学習指導要領では「学校裁量の拡大」などに言及しています。これらは、本来の教育のあり方として重要なことであり、「提言」が指摘するまでもなく、私たちがこれまで求めてきた事柄です。
  しかし、一方で教育の目的を一人ひとりの子どもたちの成長・発達ではなく、「求められる人材像」の育成とする逆立ちした姿勢では、その意図する「資質」を育成するどころか、子どもたちの成長を歪め、意欲を奪うものになりかねません。
5.全教は、文科省が、子どもたちの成長・発達を保障する教育という憲法子どもの権利条約の基本に立ち返って、その教育政策を根本的に転換すること、教職員を統制・管理するのでなく、その能力を発揮できるよう、少人数学級の推進、長時間労働の解消など教育条件をOECD諸国並に引き上げることを求めるものです。