全教のとりくみ 「全国一斉学力テストは中止しかない」

 全教は9月27日、標記の談話を発表しました。

【談話】子どもたちと学校を競争に追い立てる全国一斉学力テストは中止しかない
                              2017年9月27日
                             全日本教職員組合
                             書記長 小畑 雅子

 8月29 日、文部科学省は2017 年度の全国学力・学習状況調査(以下、全国一斉学力テスト)の結果を発表しました。2017年度の変更点として、「都道府県別の平均正答率について全ての公表・提供資料を整数値に変更」したことと、「指定都市別の結果を新たに公表」したことをあげています。また、「主体的・対話的で深い学びの視点による学習指導の改善に関する状況」について、「学校質問紙」での「習得・活用及び探究の学習過程を見通した指導方法の改善及び工夫をしましたか」等の設問への回答結果を示して、「『よく行った』または『どちらかといえば、行った』と回答した小中学校の方が平均正答率が高い」などと分析しています。さらに、新たに「部活動の状況【中学校】」を項目にあげ、「1 日当たり、1 時間以上、2 時間より少ない時間、部活動をしている生徒の平均正答率が最も高い状況にある」としています。

 全国一斉学力テストは、各県独自で実施している学力テストとあわせて、子どもたちの学力向上どころか、子どもたちどうしや学校・市町村・都道府県を競わせ、教育を歪めるものであり、全教は、従来から全国一斉学力テストの中止を求めてきました。さらに今回の結果の発表は以下のような問題点が明らかとなっています。

1、「学力向上対策」として、「春休みの宿題に過去問のドリル課題が出される」「新学期始まってすぐに学力テスト対策の授業が行われ、全国一斉学力テストまでは通常の授業が行われない」「すべての解答用紙をコピーし、4 月からその採点と分析に追われる」などの実態が各地から報告されています。本来の授業や学校の取り組みをおろそかにし、文科省ですら「あくまで学力の一側面でしかない数値である」とする「平均正答率」にふりまわされている実態が広がっています。中央教育審議会の専門家会議でも、「一部行き過ぎた対応をし ているところがある。特別な取り組みがないように改めていく必要がある」と指摘されています。全国一斉学力テストが教育のあり方を歪める実態はいっそう深刻化しています。

2、政令指定都市別の結果を新たに公表したことは、各市町村・学校の競争をいっそう過熱させ、序列化するとともに、教育内容の統制を強化するものです。これまで各都道府県がすすめてきた「全国上位〇位をめざす」「平均正答率に達していない学校に特別な指導・手だてをおこなう」などのことが、政令指定都市への権限移譲ともあいまって政令指定都市単位でも行われる危険性があります。すでに、学校別結果を公表することが容認されている中、市町村ごと・学校ごと、ひいては学級ごとの「結果公表」に道を開くものとなりかねません。

3、「学校質問紙」での設問による「主体的・対話的で深い学びの視点による学習指導の改善に関する状況」についての結果・分析や、「生徒質問紙」での設問による「児童生徒の自己肯定感に関する状況」についての結果・分析は、到底子どもたちの実態を反映しているとはいえません。「学校質問紙」や「生徒質問紙」での設問とその調査結果の公表は、子どもたちの内面を数値化しデータとして示すもので、その序列化や管理・統制につながる危険性があります。また、「部活動の状況【中学校】」についての結果・分析をはじめとして、調査結果を意図的に教育政策の推進のために利用しようとしていることに危惧を覚えます。

 マスコミ報道でも、「『学力の向上』という目的に対しては明確な答えを示さないまま、回数を重ねている」(「毎日」)等と疑問を投げかけられています。しかし、文部科学省は、2019 年度から調査教科に英語を加えることを明らかにしています。全国一斉学力テストが各県独自テストの過熱化を招いていることも明らかです。今必要なことは、全国一斉学力テストや各県独自での学力テストで得点を競わせることではなく、一人ひとりにゆきとどいた教育を保障するための、少人数学級の実現や教育の無償化をすすめることです。

 全教は、あらためて、全国の保護者・国民・教職員と共同し、全国一斉学力テストの中止を求めるものです。
  以上