全教のとりくみ 「勤務条件の改善を」 

全教は、9月27日 標記の談話を発表しました。

【談話】
教職員がゆとりをもって、笑顔で子どもの前に立てるような勤務条件への改善を、ただちに
中教審「学校における働き方改革に係る緊急提言」について〜

                       2017年9月27日
                      全日本教職員組合
                      書記長 小畑 雅子

 文部科学省からの諮問を受けて「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について」審議する中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」(以下、「特別部会」)は、8月29日、「校長及び教育委員会は学校において『勤務時間』を意識した働き方を進めること」「全ての教育関係者が学校・教職員の業務改善の取組を強く推進していくこと」「国として持続可能な勤務環境整備のための支援を充実させること」の3点について「学校における働き方改革に係る緊急提言」(以下、「提言」)を発表しました。

 今日、教職員の長時間過密労働の実態はきわめて深刻であり、教職員のいのちと健康にかかわる問題であると同時に子どもたちの教育条件にかかわる問題として、何よりも重要かつ緊急に解決すべき課題の一つとなっています。「特別部会」が、「今できることは直ちに行う」として、概算要求期に予算措置の要求を含めた「提言」を発表したこと、「勤務時間管理は校長や教育委員会の責務である」として勤務時間を客観的に把握するシステムの導入を求めていること、行政から学校に対する「依頼・指示等」の「精選及び合理化・適正化」、教員一人あたりの担当授業時間数の軽減や小学校専科教員の「充実」を求めていることは、この間のきびしい実態とその解決を求める世論のひろがりや私たちの運動が反映されたものと言えます。

 しかし、教職員の勤務・労働条件に関わる事項を審議する「特別部会」でありながら、教職員組合の代表が一人も含まれていないことには、重大な瑕疵があると言わざるを得ません。ただちに全教を含めた教職員組合の代表を参加させることを強く求めるものです。

 「特別部会」で審議されている「学校における働き方改革」(以下、「改革」)と今回の「提言」は、以下のように、教職員にとっても、子どもたちの教育にとっても重大な問題をもっています。


 第一は、文科省の諮問文の題名でもあきらかなように、この「改革」は、第一義的には安倍政権の「教育再生」政策を各学校に推進させるためのものであって、教職員の長時間過密労働の解消をめざすものではないことです。
 文科省はこれまで、学習指導要領の改訂によって授業時数を増加させながら、それに見合った教職員の定数増をおこなってきませんでした。それに加えて、一斉学力テストや教職員評価制度の導入、教員免許更新制度など一連の「教育改革」施策をすすめ、様々な報告を求めることによって、教職員の負担を増加させてきたことが、長時間過密労働の最も大きな要因の一つとなっています。したがって、今日の教職員の長時間過密労働を解消するためには、安倍「教育再生」の根本的見直しと教職員定数の抜本的改善、少人数学級の実現が不可欠です。
 しかし、「提言」は、「校長や副校長・教頭等の事務関係業務の軽減に有効な主幹教諭・事務職員などの充実」を述べるのみで、大幅な定数増や少人数学級には言及していません。代わりに、「勤務環境整備のための支援」として、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、部活動指導員等の「専門スタッフ」や、「教員の事務作業(学習プリント印刷や授業準備等)」支援等を担う「サポートスタッフ」の配置促進を求めています。そして、それによって教員の業務が「軽減」されるとして、その分の時間と労力を、改訂学習指導要領の徹底をはかるなど「新たな教育課題への対応」にあてさせようとしています。これでは、教職員の長時間過密労働が解消されないことはあきらかです。


 第二は、教職員の業務を様々な「スタッフ」に振り分け、「校長のリーダーシップの下」で階層的・組織的に構成し直すという「チームとしての学校」(以下、「チーム学校」)構想がもたらす問題です。
 いま学校では、教員が子どもたちと一緒にすごしながら子ども理解を深め、教材や授業の方法を工夫したり、生活指導に活かしたりしています。事務職員、栄養職員、現業職員など様々な職種の教職員が専門性を活かして子どもたちと向き合い、「子どもの最善の利益」のために協力しあって仕事をすすめています。一人ひとりの子どもによりそい、人格的なふれあいを大切にしながらすすめられている、子ども本位の学校教育のあり方が、「チーム学校」構想とその具体化によって、効率優先のマニュアル化されたものに変えられてしまうことが危惧されます。


 全教の各組織が実施した教職員アンケート「これが原因、わたしの長時間過密労働。これが必要、解決のために」には、「もっと子どもとふれあう時間がほしい」「しっかりと授業準備をする時間がほしい」などの切実な声が寄せられています。全教は、長時間過密労働を解消するとともに、勤務時間中に教育本来の仕事にあたる時間が確保され、教職員がゆとりをもって、笑顔で子どもの前に立てるような勤務条件を整えることを要求します。
 そのために、国と大企業が 求める「人材」養成のための教育政策を根本的に見直し、教職員定数の抜本的改善と授業持ち時間数の削減、全学年での少人数学級の実現を求めて、全国の教職員、保護者、国民と連帯し、いっそう大きな運動を広げていく決意です。