今必要なのは「9月入学」の拙速な導入ではなく、子どもたちの心身のケアと学びの保障

全教は5月13日、標記の書記長談話を発表しました。

 

【談話】今必要なのは 「 9 月入学」の拙速な 導入 ではなく、

子どもたちの心身のケアと学びの保障


 2020年 5 月 13 日
 全日本教職員組合 書記長 檀原毅也


 新型コロナウイルスの感染拡大で、多くの学校で再開が見通せない もと 、急浮上した 学校の「 9 月入学」案について、安倍首相は 4 月 29 日、「様々な要素を勘案しながら前広(まえびろ)に判断していきたい」と述べ 、 萩生田 文科 大臣 も 5 月 1 日、「広く国民の間で認識が共有できるのであれば、一つの大きな選択肢」と しています 。 これを受けて、政府は、 「 9 月入学」 を 導入する場合の論点や課題など について 整理し、 6 月上旬 には方向性を示す予定であると報道されています。
 「 9 月入学」を求める声 の 背景 には、新型コロナウイルス感染拡大にともなう学校の休校措置の拡大・延長による 、 学習の遅れや格差の 拡大 、 仲間との 豊かな 学校生活が奪われていることへの 不安 、 高校・大学入試への心配 等 の切実な 課題 があります。
 しかし 、 「 9 月入学」 導入 には、幼児教育・保育から高等教育までのすべての段階における教育と社会のあり方 全般に かかわる多くの重要な 課題があります。 その導入の是非については、中・長期的な展望も持 った 慎重な議論が必要で 、 多くの教育関係団体から、社会全体での慎重な論議を求める意見が表明されています。 この間の休校措置にかかわり緊急に求められる対策と混在させず、ていねいな議論をおこなうことが必要です。
 「 9 月入学」導入には、約半年間の発達段階のずれを考慮し、各教科や学校行事・特別活動等の年間サイクルを見通した全面的な教育課程の再編成が必要となります。 同時に、 学校と連携した 地域や 社会教育に関わる団体など、 すべての教育関係機関の計画の見直しをおこなうこと も 必要です。学校だけでなく、地域 社会に も 大きな影響を及ぼすもの で す。
 また、2020 年 4 月から 改訂学習指導要領 が小学校で 本格実施 となっていることに続き 、中学校、高校、特別支援学校においても順次押しつけられようとしているもとで 、 「 9 月入学」 導入についての 拙速 な 議論 が学校に 大きな混乱を 招く ことはあきらかで す。
 充分な論議と準備をおこなわないまま「 9 月入学」を拙速に導入することは、 子どもと 教職員 、 学校関係者に 大きな負担を押し つ けるものとなり ます。 今、 新型コロナウイルス 感染拡大 から子どもと教育を守るために様々な対応に取り組んでいる 学校、地域、家庭に さらに 大きな混乱を引き起こしかね ません 。 また、新型コロナウイルス感染拡大対策に奮闘している関係諸機関の方々にも新たな負担を強いることになります。
 今必要なことは、「 9 月入学」導入 の 議論の ために 労力や予算をかける の ではなく、 外出自粛を余儀なくされ 傷ついてい る子どもたちの心身のケアと学びの保障です。 一人 ひとりの子どもたちの声に耳を傾け、不安な気持ちや悩みを受けとめる ためにも、ゆとりある安心安全な学校生活に必要な 教職員加配や教室確保等による少人数 授業 の実施等 の 環境を整え、学びを保障することが求められています 。 また、 休校
により実施できなかった授業や行事等についての対応は、 大綱的な基準である 学習指導要領 を弾力的にとらえ 、各学校の実態に応じて、柔軟に教育課程を編成することでおこなうべきです。
 全教は、「 9 月入学」 導入には 多くの課題があり 、その 是非に ついて様々な意見があるもと、 拙速 な 導入 をおこなわないことを求めます。
                           以上